総大会
イエスに従う―平和を作り出す人になる
2022年4月総大会


イエスに従う―平和を作り出す人になる

平和を作り出す人は受け身にならず,救い主の方法で説得します。

愛する兄弟姉妹の皆さん,混乱や争い,そして多くの人々が深い苦悩の日々を経験している今,わたしたちの心は救い主と回復されたイエス・キリストの福音という永遠の祝福に対する感謝の気持ちに圧倒されます。わたしたちは主を愛し,主を信頼し,いつまでも主に従うように祈っています。

ソーシャルメディアによるチャレンジ

インターネットが大きな影響を及ぼすのは,わたしたちの時代特有の祝福であり,チャレンジでもあります。

ソーシャルメディアと情報スーパーハイウェイの世界では,一人の発言が飛躍的に倍増することがあります。真実であれ偽りであれ,公正であれ偏見であれ,親切であれ残酷であれ,その発言が瞬く間に世界中に広がるのです。

ソーシャルメディアでは,思いやりのある善意の投稿が注目されないことが多い一方で,政治理念であれ,ニュースに登場する人物であれ,パンデミックについての意見であれ,侮辱し怒る言葉は頻繁に大音響で耳に響きます。救い主と回復された主の教会を含め,だれ一人,どんなものが対象であろうと,この意見が二極化する社会現象から免れることはできません。

平和をつくり出す人となる

山上の垂訓はすべての人に向けたメッセージですが,特に救い主の弟子たち,すなわち主に従うことを選んだ人々に与えられたものです。

当時も今も,争いと不敬に満ちた世で生きる方法を主は教えておられます。「平和をつくり出す人たちは,さいわいである,彼らは神の子と呼ばれるであろう」1と,主は宣言されました。

わたしたちはイエス・キリストを信じる信仰を盾に,敵の放つすべての火の矢を鎮める―つまり抑え,冷まし,消す―ことによって平和を作り出す者となるのです。2

自分の義務を果たすとき,わたしたちは「神の子」と呼ばれるであろうと,主は約束しておられます。地上の人はすべて神の「子孫」3ですが,「神の子」という呼び名には,はるかに多くの意味があります。イエス・キリストのもとに来て主と聖約を交わすとき,わたしたちは「御子の子孫」4,「王国を受け継ぐ者,「キリストの子」,「キリストの息子および娘」5となるのです。

平和を作り出す人は,どのようにして火の矢を抑え,冷ますのでしょうか。もちろん,わたしたちを見くびる人々の前で萎縮することではありません。むしろ,信仰に自信を持ち,怒りや悪意を決して抱かずに,信念を持って自分の信条を伝えるのです。6

最近,教会を痛烈に批判する記事を目にした後,公民権運動の全国的指導者であり,サンフランシスコの第三バプテスト教会の牧師でもあるエイモス・C・ブラウン牧師は,次のように答えました。

「わたしはその記事を書いた人の経験と見解を尊重します。しかし,それに賛成はできません。」

「ラッセル・M・ネルソン会長を含むこれらの〔教会の〕指導者と知り会えたことは,わたしの人生で最も大きな喜びの一つです。わたしの見るところ,彼らはまさに,わが国の最高の指導者を絵に描いたような方たちです。」

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ネルソン大管長とブラウン牧師

そして,こう付け加えました。「わたしたちは過去の状況について不満を言うことができます。現在起こっているすべての良いことを認めず,拒むことができます。……しかし,そのような姿勢では,国の分裂を癒すことはできません。……イエスが教えられたように,わたしたちはさらなる悪をもって悪を根絶することはしません。わたしたちは,敵だと思っている人々に対しても,惜しみなく愛し,憐れみ深く生きるのです。」7

ブラウン牧師は平和を作り出す人です。彼は穏やかに,敬意をもって火の矢を冷ましました。平和を作り出す人は受け身にならず,救い主の方法で説得します。8

わたしたちの愛する真理に向かって放たれる火の矢を冷まし,抑え,鎮める内なる力を与えてくれるのは何でしょうか。その力は,イエス・キリストと御言葉を信じる信仰によってもたらされます。

「わたしのために人々があなたがたをののしり,……あなたがたに対し偽って様々の悪口を言う時には,あなたがたは,さいわいである。

……天においてあなたがたの受ける報いは大きい。あなたがたより前の預言者たちも,同じように迫害されたのである。」9

選択の自由の重要性

平和を作り出す人になりたいという望みを導く二つの重要な原則があります。

第1の原則は,天の御父がわたしたち一人一人に,自分の道を選ぶことのできる道徳的な選択の自由を授けられたことです。10この選択の自由は,神の最も大いなる賜物の一つです。

第2の原則は,この選択の自由とともに,天の御父が「すべての事物には反対のものが〔ある〕」11ようにされたことです。わたしたちは「善を尊ぶことを知るために,苦さを味わうので〔す〕。」12反対のものに驚くべきではありません。わたしたちは善と悪を見分ける方法を学ぶからです。

わたしたちは,自分の信じていることを信じない人が大勢いることを理解したうえで,選択の自由の祝福に喜びを感じます。実際,末日にあって,イエス・キリストを信じる信仰をすべての思いと行いの中心に据えることを選ぶ人は,わずかでしょう。13

ソーシャルメディアのプラットフォームにより,たった一人の不信仰の声がまるで大勢の人が否定的な声を挙げているように見えることがありますが14,たとえ大勢の声だったとしても,わたしたちは平和を作り出す人の道を選びます。

主の指導者

大管長会と十二使徒定員会には,政界,財界,文化界のリーダーのようにこの世的な動機があると考える人もいます。

しかし,わたしたちの責任は,まったく異なる方法で与えられます。選挙で選ばれるのでも,応募して選ばれるのでもありません。特別な専門的準備のないまま,わたしたちは息を引き取るそのときまで,世界中でイエス・キリストの御名について証するように召され,聖任されているのです。わたしたちは,病人や孤独な人,落胆している人,貧しい人を祝福し,神の王国を強めようと努めます。わたしたちは主の御心を知り,それを特に永遠の命を求める人々に宣べ伝えたいと望んでいます。15

わたしたちがへりくだり望むことは,救い主の教えがすべての人に尊ばれることですが,預言者を通して与えられる主の言葉は,世の考え方や傾向に反することがよくあります。昔から常にそうでした。16

救い主は使徒たちにこう言われました。

「もしこの世があなたがたを憎むならば,あなたがたよりも先にわたしを憎んだことを,知っておくがよい。……

彼らは……すべてそれらのことをするうであろう。それは,わたしをつかわされた方を……知らないからである。」17

すべての人を気にかける

わたしたちは,自分と信仰が同じかにかかわらず,すべての隣人を純粋に愛し,気にかけています。イエスは良いサマリヤ人のたとえを用いて,異なる信条を持つ人々が助けを必要としている人を助けるために心から手を差し伸べ,平和を作り出す人となり,善良で気高い大義を追い求めるべきであると教えられました。

2月,Arizona Republic紙の見出しには,「末日聖徒が支持する超党派の法案,ゲイやトランスジェンダーのアリゾナ州民を保護する」18と書かれていました。

わたしたち末日聖徒は,「信頼と相互尊重の精神で協力し合ってきた,教会やビジネスやLGBTQの人々と地域社会のリーダーから成る市民連合の一員であることをうれしく思います」19

ラッセル・M・ネルソン大管長はかつて,次のような思慮深い質問を投げかけました。「戦わずに境界線を定めることはできないのでしょうか。」20

わたしたちは,「キリストに穏やかに従〔う〕」21者となるように努めます。

口を閉ざす時

救い主に対する攻撃の中にはあまりに悪意に満ちたものもあり,救い主は何も言われませんでした。「祭司長たちと律法学者たちとは……激しい語調でイエスを訴え……嘲弄した」のに,イエスは「何もお答えにならなかった」22のです。平和を作り出す人であるためには,言い返したい衝動を抑え,威厳をもって口を閉ざし続ける必要がある時があります。23

かつてわたしたちとともに活発に教会に集い,聖餐を受け,イエス・キリストの神聖な使命について一緒に証した人が,救い主や主に従う者たち,そして主の教会に対して厳しい言葉や否定的な言葉を投げかけたり,出版するとき,わたしたち皆の胸は痛みます。24

これは,救い主が教え導かれたときにも起こったことです。

イエスが最も偉大な奇跡の数々を行われた間に一緒にいた弟子たちの中には,もうイエスと「行動を共にしな〔い〕」25と決めた者もいました。悲しいことに,すべての人が救い主を愛して戒めを守る決意を固く守り続けるわけではないのです。26

イエスはわたしたちに,怒りと争いのある所から離れるよう教えておられます。一つの例を挙げると,パリサイ人たちがイエスを問い詰め,何とかしてイエスを滅ぼそうと相談した後,聖文によるとイエスは彼らから去って行かれ,「多くの人々がついてきたので,彼らを皆いや〔され〕」27たとき,奇跡が起きたのです。28

人々の生活を祝福する

わたしたちも争いを避け,人々の生活を祝福することができます。29その際,人との交流を避けて孤立する必要はありません。

コンゴ民主共和国のムブジマイでは,当初,わたしたちの信条を理解していなかった,あるいは会員を知らなかったために,教会に批判的な人たちもいました。

以前,キャシーとわたしは,ムブジマイでとても特別な教会の礼拝行事に出席したことがあります。子供たちは清潔な服を着て,明るい瞳に満面の笑みを浮かべていました。わたしは教育について話したいと思っていたのですが,学校に通っていない子供が多いことを知りました。教会の指導者たちは,ほんのわずかな人道支援金で支援する方法を見つけました。30今では,イエス・キリスト教会の会員である16人の教師が,教会員と教会員でない少年少女を含む400人以上の生徒を歓迎し,教えています。

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カランガ・ムヤ

14歳のカランガ・ムヤはこう言います。「〔お金がなくて〕4年間,学校に行けませんでした。……教会がしてくれたことに心から感謝しています。……おかげで,フランス語の読み書きと会話ができるようになりました。」31この取り組みについて,ムブジマイ市長は次のように述べています。「わたしは末日聖徒イエス・キリスト教会に感化されています。〔他の〕教会はそれぞれが分断している中で,〔皆さんはほかの人たち〕と力を合わせて困っている地域社会を助けているからです。」32

互いに愛し合う

ヨハネ13章を読む度に,わたしは平和を作り出す人としての救い主の完全な模範に気づかされます。イエスは,愛をもって使徒たちの足を洗われました。それから,主は御自分を裏切ろうとしている愛する者のことを思い,「心が騒〔いだ〕」33と記されています。わたしは以前,ユダが去ったときの救い主の思いや気持ちを想像しようとしたことがあります。興味深いことに,その厳しい状況の中にあって,イエスはそれ以上,御自身の「騒ぐ」気持ちや裏切りについて語られることはありませんでした。むしろ,使徒たちに愛について語られ,その言葉が何世紀にもわたり語り継がれることとなったのです。

「わたしは,新しいいましめをあなたがたに与える,互に愛し合いなさい。わたしがあなたがたを愛したように,あなたがたも互に愛し合いなさい。

互に愛し合うならば,それによって,あなたがたがわたしの弟子であることを,すべての者が認めるであろう。」34

わたしたちが主を愛し,互いに愛し合うことができますように。平和を作り出す人となり,「神の子」と呼ばれますように。 イエス・キリストの御名により,アーメン。

  1. マタイ5:9

  2. エペソ 6:16教義と聖約 3:8参照

  3. 使徒17:28

  4. モーサヤ15:11

  5. モーサヤ5:7

  6. オークス長老は次のように述べています。「キリストに従う人々は,礼節の模範となるべきです。わたしたちはすべての人々を愛し,良い聞き手となり,相手の誠実な信念に関心を示すべきです。賛成はできなくても,攻撃的になってはなりません。意見の分かれるテーマについては,争いを引き起こすような態度を執ったり,発言をしたりするべきではありません。」(「違いがあっても周りの人を愛し,受け入れる」『リアホナ』2014年11月号,27)

  7. “Amos C. Brown: Follow the LDS Church’s Example to Heal Divisions and Move Forward,” Salt Lake Tribune, Jan. 20, 2022, sltrib.com.

  8. デール・G・レンランド長老はこう述べています。「キリストの愛に包まれた生活をするときに,わたしたちは,柔和,忍耐,優しさによって意見の相違に対処します。」(「キリストの平安は敵意を取り除く」『リアホナ』2021年11月号)

  9. マタイ5:11-12

  10. 2ニーファイ10:23参照

  11. 2ニーファイ2:11

  12. モーセ6:55

  13. 1ニーファイ14:12参照

  14. 最近のデータによると,5人に3人は読んでもいない記事の見出しだけを見て共有するとあります。{see Caitlin Dewey, “6 in 10 of You Will Share This Link without Reading It, a New, Depressing Study Says,” Washington Post, June 16, 2015, washingtonpost.com; Maksym Gabielkov and others, “Social Clicks: What and Who Gets Read on Twitter?” [paper presented at the 2016 ACM Sigmetrics International Conference on Measurement and Modeling of Computer Science, June 14, 2016], dl.acm.org)。

  15. 時折,自分の見解が主の預言者の教えと初めから一致しなくても,驚かないでください。ひざまずいて祈るなら,それはわたしたちにとって,学び,へりくだる機会となります。わたしたちは神を信頼し,信仰をもって前進します。やがて天の御父から,霊的により明瞭な教えを受けられると知っているからです。

  16. 教義と聖約1:14-16参照

  17. ヨハネ15:18,21:強調付加

  18. “Bipartisan Bill Supported by Latter-day Saints Would Protect Gay and Transgender Arizonans,” Arizona Republic, Feb. 7, 2022, azcentral.com.

  19. Why the Church of Jesus Christ Supports a New Bipartisan Religious Freedom and Non-discrimination Bill in Arizona,” Feb. 7, 2022, newsroom.ChurchofJesusChrist.org.

  20. ラッセル・M・ネルソン「赦しと愛とを持たしめたまえ」『聖徒の道』1994年7月号,75参照

  21. モロナイ7:3。ゴードン・B・ヒンクレー大管長は次のように述べています。「わたしたちは寛容でなければならないだけでなく,見解を異にする人々に対して肯定的な感謝の精神を養わなければなりません。だからといって,わたしたちは天の神によって明らかにされた神学,信念,そして永遠の真理の知識について妥協する必要はまったくありません。静かに,誠実に,そして正直に,真理について自分の証を述べることができますが,人を不快にさせるような方法を決して取ってはなりません。……わたしたちは,自分たちと同じように心から信じる信条を持って実践している人々をたたえ,彼らに敬意を払うことを学ばなければなりません。」(“Out of Your Experience Here” [Brigham Young University devotional, Oct. 16, 1990], 6, speeches.byu.edu)

  22. ルカ23:9-11参照

  23. ディーター・F・ウークトドルフ長老は次のように述べています。「イエス・キリストに従う者として,わたしたちは〔主の〕模範に従います。わたしたちは人を辱めたり,攻撃したりしません。神を愛し、隣人に仕えるように努めます。わたしたちは喜んで神の戒めを守り,福音の原則に従って生活するように努めています。」(“Five Messages That All of God’s Children Need to Hear” [Brigham Young University Education Week devotional, Aug. 17, 2021], 5, speeches.byu.edu).

  24. ニール・A・マックスウェル長老はこう述べています。「教会員は福千年まで毒麦と小麦の状態に置かれるでしょう。中には小麦のふりをしている毒麦がいて,もはや信じていない教会の教義について会員たちにしきりに説教しようとします。また自分ではもはや献金していない教会基金の使い道について批判します。あるいは,もはや支持していない教会の幹部に恩着せがましく助言しようとします。人に批判的で自分に寛大な彼らは,教会を去っても,教会への批判はやめません。」(「子供のようになる」 『聖徒の道』1996年7月号,78)

  25. ヨハネ6:66

  26. 「罪の……歓楽〔はかない〕。」(ヘブル11:24-26参照)

  27. マタイ12:1ー15参照

  28. マタイ12:15

  29. 3ニーファイ11:29-30参照

  30. ドン・ボスコ財団の支援により,この学校プログラムは,授業と教材に関する貴重な専門知識を得ることができました。

  31. 父親のミュレカはこう述べています。「娘に……読み書きを学ぶ機会と,より良い将来への希望を与えてくれたこのプログラムがとても好きです。わたしは市場でトウモロコシの粉を売っているのですが,食べるのがやっとで,……彼女を学校に通わせることができませんでした。教会に深く感謝しています。」教師のモニーク姉妹は次のように述べています。「このプログラムは子供たちにとって大きな祝福でした。わたしのクラスでは……ほとんどの子供たちが孤児です。子供たちはこれが気に入っていて,定期的にクラスに参加して宿題をしています。(コメントと写真は,2022年2月24日にジョセフ・W・シタティ長老により提供)

  32. 2021年10月10日に,ルイス・ドール・ントゥンバ・トゥシポタ市長が公の集会で,末日聖徒イエス・キリスト教会のイニシアティブであるムブジマイ識字プロジェクトについて言及しました。

  33. ヨハネ13:21

  34. ヨハネ13:34-35